「非正規でも正社員と同じように一所懸命働いています。もう少し人間的に扱って欲しい」と訴える若者に、涙する宇都宮さん。
2014年01月29日
「大丈夫、人生はやり直せる サラ金・ヤミ金・貧困との闘い」
「大丈夫、人生はやり直せる サラ金・ヤミ金・貧困との闘い」は、2009年に書かれた本です。
昨年、東京で開催された日本母親大会で社会保障の分科会「人権としての社会保障の実現を」に参加し、その時のパネラーが宇都宮健児さんでした。
同じパネラーの井上英夫金沢大学名誉教授の迫力に比べて大人しい雰囲気。
後で、2012年の東京都知事選に出た宇都宮さんだと気づきました。
なんか、候補者やってたふうには見えない…(私もよく言われるけど…)
お昼休みの時間にロビーで書籍のサイン会をやっていて、「せっかくだし」と、読みやすそうな本「大丈夫、人生はやり直せる サラ金・ヤミ金・貧困との闘い」を買いサインをしてもらいました。
帰りの新幹線の中で読み出したのですが、正直、自分の見識の狭さに恥ずかしくなりました。
宇都宮さってすごい人だったんだ〜
前・日弁連会長、反貧困ネットワーク代表という肩書きが、「当て職」ではない、それだけのことをこれまでやってこられてたんですね〜!
私は市会議員になって、一番多い生活相談はサラ金問題でした。
自己破産の相談や弁護士さんの紹介など多数、関わってきています。
その中でサラ金被害者を守る法律があって当たり前となっていること、例えば、ヤクザまがいの暴力的・脅迫的な取り立てはできないとか…そんなことが、実は規制されずにやりたい放題の時代があったこと、しかも、今、出資法では年29.2%までの利息ですが、なんと、当時の利息は年100%(109.5%まで)もあったことを初めて知りました。
そして、所得倍増計画、高度経済成長で自動車、テレビ、冷蔵庫、洗濯機とどんどん普及していく中で、この大量販売、大量消費を補完する手段としてこのようなローン・クレジットが登場したとのこと…。
「高度経済成長」の時代、私はまだ子どもでした。
華やいだイメージの高度経済成長の影で、業者からの取り立てに追われ家庭が離散、乳児院に預けられた赤ちゃんに督促状が届き、借金を苦に自殺した夫の通夜に業者が取り立てくくる、子どもの小学校にまで業者が来たり、サラ金苦で誘拐、強盗…などなど、自殺や犯罪が毎日のように報道されていたそうです。
サラ金地獄…よくそんな言葉を子どもの頃から耳にしてきましたが、まさに地獄だったのです。
当時は、サラ金の相談は、事務所に暴力団が怒鳴り込んで来る、お金がない被害者の相談にのっても金にならない、と嫌がられて引き受ける弁護士がいなかったそうですが、そんな中で、両親の苦労した背中を見て育った宇都宮さんはサラ金被害者に親身になって相談にのり解決してきました。
そして、弁護士さんたちにサラ金問題の学習会をし、「サラ金は解決しても弁護士報酬がもらえない」という弁護士達に、「解決後に、分割してもらえばいい」と提案し、サラ金問題に取り組む弁護士を増やしていったそうです。
1978年に「サラ金問題対策協議会」(現・全国クレジット・サラ金問題対策協議会)をたちあげ、「サラ金三悪」をなくす運動をすすめてきました。
こうして、「サラ金規制法」が制定され、過酷な取り立ても規制され、出資法の利息の引き下げ等、実現させてきました。
この本「大丈夫、人生はやり直せる サラ金・ヤミ金・貧困との闘い」は、こうした宇都宮さんの活動や生い立ちに加え、貧困問題の本質なども書かれています。
いくら出資法の利息が下がったとしても、貧困問題が解決されなければ、本当の解決とは言えません。
自殺が三万人を15年ぶりに下回ったとは言え、いまだに三万人近い方が自殺をしています。
しかも、敦賀は2年連続で増えています。(平成23年11人、平成24年16人、平成25年10月現在22人)
OECD諸国の生産年齢人口における相対的貧困率では、日本は13.5%で、平均の8.4%を大きく上回り、アメリカ13.7%につぐ貧困大国となっています。
日本の子どもの貧困率も14.3%、ひとり親家庭では57.9%で、アメリカ40.3%よりも高くなっています。
年収200万円以下で働くワーキングプアは年々増加し、いつ首になるか分からない不安定な非正規雇用が増えています。
「何年働いても昇給も退職金も無く、結婚もできない」
「非正規でも正社員と同じように一所懸命働いています。もう少し人間的に扱って欲しい」と訴える若者に、涙する宇都宮さん。
宇都宮さんはこれらの貧困問題の解決として、最低賃金の引き上げ、正規労働者と非正規労働者との均等待遇(同一労働同一賃金)、労働者派遣法の抜本改正、雇用保険制度の改善、利用しやすく効果的な職業訓練、職業教育制度の確立などのワーキングプア対策の強化、生活保護制度の充実、公営低家賃住宅の増設などセーフティーネットの強化、高等教育の無償化をあげています。
いま、東京都知事選が行われています。
宇都宮さんが再び立候補したと聞き、「あの宇都宮さんだ〜」と…。
でも、候補者が乱立し、これまで応援してくれていた瀬戸内寂聴さんや鎌田慧さん、湯川れい子さんまでもが「脱原発」で細川さんの応援にまわったとか…。
なんか…すごく残念で悲しいです
ぜひ、多くの方に「大丈夫、人生はやり直せる サラ金・ヤミ金・貧困との闘い」を読んでいただきたいです。
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「非正規でも正社員と同じように一所懸命働いています。もう少し人間的に扱って欲しい」と訴える若者に、涙する宇都宮さん。