2014年07月29日

宇都宮健児さんのお話(母親大会にて)

7月6日、福井県母親大会で宇都宮健児さんの記念講演がありました。

お話がとても良かったので、ブログにアップしようと、この間、まとめてきました。

20日以上かかりましたが、ようやく完成しました。

講師の宇都宮健児さんは、弁護士で元日弁連会長です。

サラ金の利息が100%もあった時代。

暴力団の取り立てが子どもの学校までおしかけ、まさに「サラ金地獄」が横行した時代から、問題解決に奔走してきました。

サラ金問題を引き受ける弁護士を増やし、金利引き下げの運動の先頭にたち、サラ金問題の専門家としてがんばって来られた宇都宮さん(私のブログ参照)。

全国ヤミ金融対策会議代表幹事、オウム真理教犯罪被害者支援機構理事長、反貧困ネットワーク代表、年越し派遣村名誉村長…数々の肩書きがありますが、決して名誉職ではなく、地道な努力、活動をされてきたすばらしい方です。

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第46回 福井県母親大会記念講演(2014.7.6)

「今、憲法が危ない! 憲法改悪を許さないために 〜憲法を守り、生かそう〜」

講師 宇都宮健児

1、安倍政権の暴走

サッカーでコスタリカががんばっていた。

コスタリカは軍隊を持たない国で、国同士の争いがあると仲裁に呼ばれるなど、周りの国々から尊敬されている。

安倍政権は、いろいろ悪い事をしているが、一つ、良い事ことがあった。

それは、安倍さんのおかげで、憲法に関心を持つ人が増えたこと。

これまで講演の依頼はサラ金問題、貧困問題がほとんどだったが、最近は8割が憲法の講演。

「立憲主義」というものも多くの人に知られるようになった。

情勢は厳しいが、闘いはこれからである。

(1)原発の再稼働、原発の輸出

安倍政権は、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけるエネルギー基本計画を閣議決定した。

福島では13万人の方が避難生活を余儀なくされ、そのうちの4割の方が家族とバラバラになっている。

汚染水漏れもひどく、事故処理の収束はつかない。

そして、5月21日、福井地裁は大飯原発の再稼働差し止めを命じる判決を出した。

憲法13条(個人の尊厳、幸福追求権など)、25条(生存権)の人格権を尊重する判決であり、人の命と経済を同等にみてはいけない、というもの。

三権分立の司法権が本来の役割を果たしたと言える。

これまで数々の原発訴訟が行われてきた。

もし、このような判決がもっと以前に出されていれば、福島原発事故は防げたかも知れない。

2003年もんじゅ訴訟、2006年志賀原発訴訟で勝利したが、その後、逆転敗訴となっている。

ちなみに、志賀原発2号機の運転差し止め判決を出した当時の金沢地裁裁判長の井戸さんはその後、弁護士となり、福島の被災者の支援をしている。

原子力村(電力会社や銀行などの企業、政治家、官僚、大学研究者、マスコミ)の問題はこれまでも言われてきているが、実はもう一つ、司法にも問題がある。

裁判官の人事権を持つ事務総局が力をもっていて、最高裁が気に入る判決を出すと出世し、最高裁が気に入らない判決を出すと遠くへ飛ばす。

そのため、司法の世界には上ばかり見るヒラメ裁判官が多い。

今後、大飯原発訴訟が、高裁、最高裁で維持されるのかは原発運動の力にかかっている。

また、大飯原発の差し止め判決を出した3人の裁判官を守る運動をして欲しい。

(2)社会保障制度の改悪〜憲法25条の空洞化

平成25年、生活保護基準が引き下げられたが、特に引き下げ幅が多かったのは子育て世代。

ある女性は「月2000円も生活保護費が減った。これは私たち家族の三日分の食費です」と…。

最近、衆議院会館に吉野家が店を出した。

一杯1200円もする牛丼が国会関係者に人気ある。

生活保護基準を問題にする国会議員は、生活保護の金額でしばらく暮らすべき。

そうでないと国民の暮らしが分からない。

日本は、世界的に見て生活保護をうけている率はとても低い。

日本は1.6%〜1.7%だが、ドイツは9.7%、イギリスも9.27%。

その一方で日本では餓死、孤立死が多発している。

芸能人の親が生活保護を受けていることをスクープし、不正受給としてマスコミを通じて大きく報道したり、生活保護費でパチンコに行くことを記事にするなど生活保護バッシングが行われているが、これらは不正受給にあたらない。

不正受給というのは、収入を隠して受給すること。

不正受給は保護費受給者のうちわずか0.5%で、母子家庭の子どもがアルバイト収入を隠していたというものがその大半。

兵庫県小野市では、生活保護受給者がパチンコに行っているのを見たら通報する条例を多くの議員が賛成して作った。

生活保護は権利であるにも関わらず、片山さつき参議院議員は、「生活保護は恥と思わないとだめ」と発言した。

権利を削り取るものであり、マスコミは何を問題にしなければならないか考えるべき。

(3)雇用破壊

安倍政権は、企業が世界一働きやすい国を作るとし、労働者派遣法の改悪を行おうとしている。

安倍「私のドリルで割れない岩盤はない」と公言している。

「企業が世界一働きやすい国」は、企業にとっては天国だが、労働者には地獄。

アメリカでは「私たちから税金をとってくれ」と言う大資本家が出てきているが、日本の金持ちは言わない。

税と社会保障の一体改革で消費税を8%に増税し、社会保障を充実すると言いながら削減した。

この間、雇用破壊によって女性は5割り、若者は4割りが非正規となり、年収も1997年をピークに25兆円減っている。

ところがその一方でGDP(国内総生産)は増えている。

生産量は増えているのに、労働者の賃金は減っている。

国の財政が厳しいからと言って消費税が増税されようとしているが、国の収入は消費税だけではない、所得税もある。

所得税は累進課税だが、高額所得者の税金が一番高かったのは1980年頃、75%だった。

フランスでも70%なのに、日本ではこの間、経団連の要求で税金の改悪をおこなってきた結果、現在、45%に引き下げられている。

トヨタ自動車の社長、豊田章男氏が「やっと税金を払えるようになった」と発言した。

貧困格差を是正するのが所得税による冨の再分配である。

私は、富裕税をつくって「税金をお金持ちからとれ運動」をやろうと、金持ちのリストアップしている。

(4)TPPへの参加

ISD条項は、国の主権を脅かし、憲法秩序を破壊する。

これは、日本において海外の企業や投資家にとって不都合な問題があれば、国際投資紛争解決センターに訴え、日本政府にたいして損害賠償請求ができるというもの。

国際投資紛争解決センターは世界銀行の傘下にあり、世界銀行の本部はアメリカにある。

(5)国家戦略特区構想

安倍政権は国家戦略特区を進めているが、そうなれば、日本の保険制度が解体される。

アメリカでは、盲腸の手術に550万円かかるため、お金が払えなければ死ぬしか無い。

(6)教育の反動化

戦争の反省に則って教育の中立化をしてきた。

ところが、安倍政権は、軍国主義教育を復活し、国のために若い人が命をなくす国づくりを進めようとしている。

2、改憲をめぐる情勢

(1)
安倍政権は「96条を変えなきゃいけない」と言い出した。

憲法改正手続きは、衆参両議院の三分の二以上の発議によって国民投票を行うが、そのハードルを下げるべきとして二分の一を主張している。

これについて改憲派の憲法学者でも「邪道」と指摘があった。

昨年7月の参議院で改憲派の議員が242から162に減ったため、96条を変えることを先延ばしにし、解釈に力を入れだした。

(2)
安倍政権は、「集団的自衛権」の行使を容認しようとしている。

外部からの攻撃にたいして自国を守る「個別的自衛権」は憲法9条でも認められている。

イラク戦争以降、テロが各地で起こり、日本はサマワに行ったが、戦死者は1人もいない。

それは、集団的自衛権が憲法違反であり、認められていないから。

当時の小泉首相も「自衛隊が行くところが非戦闘地域」と国会でも答弁している。

アメリカでは、イラク、アフガン戦争に行った兵士が毎年6000人自殺している。

復員した兵士が27万人いるが、3人に1人が自殺を考えているとのこと。

市民社会で育った人にとって戦場でのストレスは大きく、社会復帰できない。

アメリカでは低所得者に軍隊に入って勉強するよう働きかけている。

働いても奨学金は払えず、軍に入れば免除されるため、軍に入るしか無い。

日本でも、2人に1人が奨学金をもらって大学に行くが、30万人が滞納し裁判にかけられている。

「昔、サラ金。今、奨学金」。

日本でも意図的に貧困格差が広げられている。

それでも自衛隊に入る人が少なくなれば、徴兵制が必要となることが、内部の「安保法制懇」で議論されている。

この「安保法制懇」は安倍さんの仲間ばかり、NHKと同じ。

武器輸出三原則の基準緩和で、さっそく、フランスの武器の展示会に日本も初めて出展した。

武器や原発を輸出してもうけようとしている。

カジノを誘致してまで設けようとしている。

国民の判断を問わない、独裁政治である。

集団的自衛権には、自衛隊員が一番反対している。

救助するために入ったのであって、殺人をするために入ったのでは無い。

闘いはこれから。

9条はまだ変わっていない。

秋の臨時国会にむけて、自衛隊の派遣に反対する闘いをしていく。

3、自民党改憲草案の危険性

(1)日本国憲法の理念と基本原理

立憲主義の理念と国民主権、基本的人権の尊重、恒久平和主義の三つの基本原理は憲法そのものであり、96条でも変えられない。

立憲主義とは、権力を縛るもの。

人権を守ることは、民主主義でなければ守られないし、平和でないと守られない。

(2)自民党改憲草案は、立憲主義の理念を放棄し、国民主権・基本的人権の尊重・恒久平和主義の三つの基本理念を変容させようとしている。

自民党は全部、変えようとしている。

(3)自民党改憲草案の主な内容

@「国家権力を縛るルール」から「国民を支配する道具」へ
  ・立憲主義の理念の放棄(102条1項)
  ・日の丸、君が代の尊重義務(3条)
  ・国民の責任と義務を強調(12条など)
  ・家族の助け合い義務(24条1項)
A憲法9条を改正…平和主義の放棄、国防軍の創設、軍法会議の設
  ・自衛権の発動(9条2項)
  ・国防軍の創設(9条の2、1項)
  ・軍法会議の設置(9条の2、5項)
  ・徴兵制の導入も可能にする(18条)
  ・緊急事態(第9票、98条、99条)
  ・改正手続き(100条)
B天皇の元首化…天皇の政治利用、国民主権の後退
  ・天皇の元首化(1条)
  ・「集会、結社、表現の自由」を「公益及び公の秩序」により制限(21条2項)
C基本的人権の制限…国際人権の流れに逆行
  ・基本的人権を制限する概念として「公共の福祉」に代え「公益及び公の秩序」を使用。
  ・憲法97条(基本的人権の本質)を削除。

3、自民党改憲草案の危険性

(1)政治的立場・イデオロギー的立場を超えてつながることの重要性

イデオロギーを超えて運動の輪を大きくするためのしなやかな能力が求められている。

同質の集団の集まりは「和」にしかならないが、異質の集団の集まりは「積」になる。

(2)運動を一回りも二回りも広げていく工夫の必要性

無関心な人にどう拡げるか。

戦争に行くのは若い人であり、安倍さんは戦争の最前列には行かない。

憲法12条には「国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない」とある。

不断の努力によって、憲法を生活に定着させる運動が必要。

学校では、憲法25条を理念、知識でしか教えない。

生活保護でも市役所の窓口で、「水際作戦」されたり、どこへ相談に行ったらいいのかわからない。

高校では、困った時に相談する連絡先を教えるべき。

また、労働組合の作り方、デモや集会の仕方、ビラのまき方を教えるべき。

(3)護憲運動だけでなく、憲法を実質化させる運動が重要である(憲法12条)

原点に返り、憲法を変えるのではなく、役立つ、定着させる運動にしていく。

(4)憲法改悪の動きはピンチではあるが、あらためて日本国憲法の立憲主義の理念や国民主権・基本的人権の尊重・恒久平和主義の原理を日本社会に定着させるチャンスでもある。

我々は微力だが無力では無い。

微力をつなげれば大きな力になる。

危機的情勢だが、感心をもつ人が増えている。

その環境を安倍さんが創ってくれている。

ピンチをチャンスに変えていこう。

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posted by きよこ at 21:25| 日記2014.01〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする