4日〜5日の3日間で、講義を2つ受講しました。
ネットの録画配信なので、
4時間の講義を、活動の合間や夜遅くとか…
観たい時に見られます。
また、聞き逃したり、分からなかったら、
何度も巻き戻し?して見ることができます。
なんて、便利❗
ただ、録画配信なので、
質問ができないのが難点ですが…
とても勉強になりました。
「デジタル田園都市国家構想の概要、問題点、展望」
2022年6月に「新しい資本主義のグランドデザイン
及び実行計画」が閣議決定された。
新しい資本主義の柱は、
@社会的課題をつうじて新たな市場を創る、
企業の成長に繋げていく。
孤独・孤立対策や、環境保護などに加え、
医療、介護、教育など、
これまで官が担ってきたサービスを企業が担い
企業の収益になる仕組みをつくることで、
社会的課題解決と経済成長の二兎を実現する。
Aデジタル田園都市国家構想の推進で、
大都市と地方の格差を解決する。
デジタル田園都市国家構想の推進で、
東京一極集中から、多極集中への転換を図る。
では、デジタル田園都市国家構想とは?
デジタル田園都市国家構想の目的は、
公共部門を民間企業に開放すること。
吉備中央町の計画では、
データ連係基盤、医療・福祉、移動は富士通、
教育はベネッセコーポレーション、
物流はANAホールディングス、
地域ポイントはNTT西日本、
防災・エネルギーはNTTファシリティーズが主担当。
会津若松市の計画では、
データ連係基盤・観光・ヘルスケアはアクセンチュア、
食・農業・教育は凸版印刷、
防災はソフトバンク、
ものづくり・廃棄物はSAP、
モビリティは三菱商事、
地域活性化はパナソニックが統括企業。
現在、医療、福祉、教育、防災など
市民生活に関連する分野については、
行政が計画を立て、展開しているが、
デジタル田園都市国家構想では、
各分野の計画を企業が立て、
データ連係基盤事業も企業が運営する。
情報技術が中心になるため、企業まかせになり、
行政と企業の関係が逆転してしまう。
企業が提供する以上、対価が求められる。
対価を支払うことができない、自己負担ができない層は
恩恵を受けることができない。
企業主導型のシステムで、
地域の医療、福祉、健康管理が行われるようになると、
システムから疎外された市民の健康管理には
誰が責任を負うのか?
議会の関与も不明。
また、市民は、わずかな利便と引き換えに、
高度な個人情報を企業に提供する。
個人情報保護法では、法28条の三で、
実施主体は、自治体が持っている
データの提供を求めることができるし、
自治体は、求められたら、遅滞なく、
実施主体に提供するものとする、としている。
提供した個人情報の利用範囲が厳密にまもられるのか?
市民はどのように確認できるのか?
提供した個人情報の削除を求めることができるのか?
更に、『スーパーシティに関する重要な留意事項
について(案)』には、
「住民投票において同意が得られたサービスについては
…住民が全員利用することを原則とする」とあり、
参加しない権利は保障されない。
更に、転居の支援まで記されており、
参加したくなかったら転居せよということか?
デジタル化は否定しないが、DXは魔法の杖ではない。
市民生活や地方における問題に多くは
新自由主義的施策によってもたされている。
新しい資本主義とデジタル田園都市国家構想が
新自由主義の延長であるなら、
自体をさらに悪化させる。
地方の発展を考える場合、
団体自治と住民自治の発展が不可欠。
DXを進めるために自治体の独自施策を縮小させることは、
地域の独自性を失わせることに繋がる。
また、考えない自治体を作ることになる。
デジタル田園都市国家構想では市民=利用者だが、
市民は利用者であると同時に、自治の担い手であり、
その視点で、市民と企業が情報を通じてつながり、
市民を豊かにすべき…等々。
《感想》
この間、DXはある程度、研修で勉強してましたが
具体的な事例をお聞きし、そこまで行っているのか!?
と驚きでした。
単なるデジタル化ではない、
自治体そのものが作り変えられてしまうことに、
ゾッとしました。
デジタル化は避けて通れないけれど、
自治体のあり方、住民自治、利用できない市民など
問題は山積みです。
敦賀市の今後の計画について、
その点をしっかり見ていかなくては!と思いました。
「デジタル改革と自治体の個人情報保護条例のゆくえ」
デジタル化政策と個人情報保護制度は
密接に関係している。
まず、個人情報保護は…
1980年にOECDから勧告が出され、
地方で先行して条例化されていった。
1988年、行政機関電子計算機処理個人情報保護法が
でき、
2003年に個人情報保護関連5法が成立した。
一方、デジタル化は…
1994年に行政情報化推進計画ができ、
2000年にIT基本法、e-japan戦略などできたが、
デジタル化は、あまり進んでこなかった。
2010年に「新たな情報通信技術戦略」ができ
新市場の開拓がもりこまれたことで、変わりだした。
2013年に番号法(マイナンバー制度)が制定され、
2015年、個人情報保護法の改定で、
個人情報の利活用が盛り込まれ、
2016年、行政機関個人情報保護法も改定され、
個人情報の利活用が盛り込まれた。
2019年、内閣官房に
「個人情報保護制度の見直しに関する
トランスフォース(TF)」が設置され…
2020年、「TF最終報告」が出された。
「デジタルガバメント実行計画」が閣議決定され、
「自治体デジタル・トランスフォーメーション
(DX)推進計画」が出され、デジタル化が本格始動。
そして、2021年、個人情報保護法が改定、
デジタル改革関連6法案が成立した。
また、これによって、IT基本法は廃止された。
成長戦略としてのデジタル化が進められることとなり
「ヒト、モノ、カネ」と並んで、「情報」が
新たな経営資源となった。
デジタル改革関連6法案の「基本法」では
これまでの「高度情報通信ネットワーク社会」から、
「データ利活用により発展するデジタル社会」へ。
「設置法」で、内閣府にデジタル庁が設置されたが、
内閣府よりも上で、かなり強い組織である。
また、マイナンバーの事務、個人情報保護の事務も
デジタル庁へ移管された。
白藤博行氏(専修大学法学部教授・弁護士)は
「政治的契機、権力的契機による改革」と。
更に、「標準化法」により、国の統制を強化された。
2021年個人情報保護法の改定の背景は、
「2000個問題」自治体ごとに規定、運用が違う、
保護の水準を満たさない自治体、
条例がない一部事務組合があることから、
個人情報の保護を万全に期すため、
一元的に監督する体制がある、としている。
そして、三本の法律を一本に統合したことで、
行政機関個人情報保護法がなくなり、
自治体の条例はいったん「リセット」されることに。
そして、今後、国が定めた共通ルールに則って
個々に条例を改定することになる。
そのさい、これまでのような市町の独自性は
ほぼ、認められない。
許容するものは一定あるが、
「必要がある場合に限」とされ、
国のから制限される方向性が強い。
更に、個人情報の定義そのものもが
民間に合わせて緩和される。
所得の制限も、民間にあわせて緩和される。
本人から取得できるのに、
他から取得することを法律で認めて良いのか?
要配慮個人情報(JGBT、特定の地域の
出身である等の情報)の収集制限がある自治体が
現在、94.3%ある。
条例改定のさい、要配慮個人情報の内容を
追加することはできるが、
規律追加(収集禁止)は認められない。
利用や提供についても、規制が緩和される。
オンライン結合は、国がもっともやりたかったこと。
これにより、多くの自治体がもつ「原則禁止」規定が
無くなる。
1975年徳島公安条例事件最判では、
「条例が国の法令に違反するかどうかは、
両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく、
それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、
両者の間に矛盾牴触があるかどうかによつて
これを決しなければならない」とある。
国の法律だけを見て、
それに合わせて条例をつくるのでなく
考えて、主張していくべき。
デジタル社会にあって自治体は、
国のバックアップ組織との議論があったが、違う。
更に、今後は、個人の尊重のため、
プロファイリングの規制が必要。
GDPR(EUの個人情報保護委員会)では、
プロファイリングに対して異議を唱える権利(同 21 条)
自動処理のみに基づき重要な決定を下されない
権利(22 条) などがあるが、日本にはない。
そのため、個人情報の保護という法目的に向けた
プライバシー保護条例の制定を求めることが重要。
…等々。
《感想》
この間、議会運営員会で、
議会の個人情報保護条例についてどうするか?
との話し合いが行われています。
そのため、勉強しなくては!と思って受講したのですが
大変、勉強になりました。
敦賀市の条例改定も、今後、必要ですが、
「そもそも」がよく分かったので、
敦賀市の条例をどうするか、についても
たいへん参考になりました。
申し込んで受講して、本当に良かったです。